Hさんのお住まい リフォーム記録

 

■工事はまだ始まったばかり

 

 築25年の戸建てをほぼ全面リフォームすることになり、設計・監理を久米さんの事務所にお願いすることにしました。

 

 久米さんの事務所のホームページから初めてコンタクトを取ったのが昨年の8月ですから、それからちょうど1年が経過したことになります。元々は春頃からの着工を予定していましたが、細部にわたってじっくりと検討していくうちにとうとう夏になってしまいました。また4月の消費税改正に伴う駆け込み需要で、大工さんなど工務店さん側の陣容が揃わなかったという面もあります。その間、久米さんとの打合せは12回を数え、その他にも構造調査や工務店との相見積もり・契約の立ち会いで家に来ていただいたり、キッチンやタイルを見にショールームにご一緒していただいたりと、リフォームなのに新築の案件を含めても、おそらく一番手のかかるクライアントではないかと思います。久米さん、いつも本当にお世話になっています。いよいよ、これからが本番ですね(笑)。

 

 さて、6月下旬に今回の工事をお願いする工務店さんとの契約を締結し、7月初旬に仮屋へ引っ越したあと、解体工事が始まりました。解体してみると、雨漏りしている箇所が見つかったことや、取る予定だった柱が通し柱で取れないことなどが分かり、設計を一部見直す必要はありましたが、大きな問題はなくお盆明けからの施工に取り掛かれる準備ができました。これから徐々に出来あがっていく新しい我が家の様子を楽しみながら、11月の竣工を迎えたいと思います。

 

 

■リフォームを決断した理由

 

 今回、リフォームを決断したのには大きく3つの理由があります。一つは水周りの老朽化、二つ目は冬の寒さ対策、三つ目はドイツでの生活の影響です。

 

 築10年の中古物件だったこの家を購入したのが今から15年前の1999年で、それ以降、給湯器以外の水周りには全く手を付けていませんでした。とくにシステムキッチンの老朽化は激しく、冷蔵庫は故障し、吊り戸棚は徐々に下がり天井との隙間ができ、また夏場は排水が臭うといったような、いくつもの不具合がありました。お風呂は機能的には問題ありませんでしたが、大きな窓とタイル張りのため冬は寒くて仕方ありません。また1階のトイレは道路に面しているため、外の声が近くに聞こえる(中の音も…)ということもあって、場所を移したいと常々思っていました。

 冬の寒さはもっと切実なものでした。厳寒期にはお風呂だけでなく、各部屋も暖房してもなかなか暖まらず、何処からか冷気も流れ込んできます。一度こたつに入ってしまうと最後、出るのもおっくうになる寒さでした。この冷気の正体は窓が多い(もちろんペアガラスではない)ことに加え、そもそも壁の断熱材が薄く、床下にいたっては断熱材自体が入っていないことが原因でした。建築された25年前ではこれが当たり前だったそうですが、寒いわけです。

 

仕事の関係で、2008年の夏から4年間、家族全員で暮らしたドイツでの生活も今回のリフォームに少なからぬ影響を与えています。ドイツの気候は日本の北海道と似ていて、夏は涼しく、冬は相当冷え込みます。マイナス17℃を記録したこともあります。でもハイツングという、ボイラーで沸かしたお湯を循環させるセントラルヒーティングのおかげで、家の中は冬でもTシャツ1枚で過ごせる暖かさでした。

このドイツでの生活でもう一つ気に入ったのが食洗機。ドイツ製の大型の食洗機は鍋やフライパンまで一度に洗えますし、じっくり時間をかけて洗うのでピカピカになります。今度の新しいキッチンにはドイツ製(AEG)の食洗機を入れることにしました。

 またドイツに滞在中、日本の家は空き家のまま、電化製品も大半は日本とドイツの電圧が違うためにお留守番だったのですが、帰国して半年の間にこの電化製品たちが次々と壊れました。部品交換で直ったものもありますが、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、洗濯機、空気清浄機などなど…。冷蔵庫や電子レンジは無くてはならないので買い換えましたが、テレビはリフォーム完成に合わせて、初めての大型液晶テレビを買いたいと思っています。

 

 

■細部にわたってこだわりが強い?

 

 久米さんに設計を依頼するにあたり、まずは妻と、現状の不具合等を洗い出し、リフォームによって実現したいことをまとめることから始めました。おおよその予算もありましたが、何にいくらかかるか全く分からないので、最初から絞り込むことはせずに、思いつく要望は全て記載しておいて、1回目の打ち合わせに臨みました。

 最初から話は尽きず、昼過ぎから夜遅くまで長時間にわたる打合せになりました。毎回そうですが、久米さんはこちらの要望や疑問に対して、一つ一つ曖昧にせずに、丁寧に出来ること出来ないことなどを説明してくれます。こちらも興味も手伝ってつい話を広げたりしてしまうので、余計に時間がかかります。でも毎回の打合せはいつも楽しく、時間が経つのを忘れて長居してしまうというのが本当のところです。たまに同行する息子は退屈だったかもしれませんが…。

 

 打合せ回数を重ねるたびに、リフォームの細部が固まっていきます。間取りもさることながら床材や設備機器類、照明、配線なども決めていきます。

 

 まずはキッチンの選定が重要なポイントになりました。キッチンは久米さんからご紹介のあったZeyko(ツァイコ)とKey(キー)という輸入キッチンとトーヨーキッチンで悩みました。ZeykoとKeyはクッキングプラザ大阪のショールームに、トーヨーキッチンは神戸のショールームだけでなく、岐阜県関市にある工場に併設されたOUTLETまで見に行きましたが、最終的には展示品のZeykoのキッチンに決めました。Zeyko自体も食洗機もドイツ製で、また同じく展示品のダイニングテーブルと椅子もセットにして破格の値段で購入させていただくことが出来ました。

 

 寒さ対策の一つ、床暖房にもこだわりました。こちらも久米さんからご紹介のあった富士環境システムの床暖房システムで、熱伝導が最高に良い銅製パネルのものにしました。また、この床暖房は低温(MAX60℃)のため、床のフローリングに杉板を使えます。これも大きな選択ポイントになりました。1階床面積の約90%にこのパネルを敷き詰めますので、今年の冬は、これまでと違う暖かい冬になりそうです。

 小さなところでは、キッチン周りのタイルにもこだわりました。使う量は少ないのですが、購入したシステムキッチンに合うものを久米さんと探しました。大阪の平田タイルのショールームに2度も足を運び(もちろん久米さんもご一緒に)、綺麗なタイルを選ぶことができました。

 ただ、こだわり過ぎると予算がいくらあっても足りなくなります。実際、やや予算はオーバー気味ですが、じっくり考えて選択したこれらの設備等については満足しています。

 

 

(第2回に続く)

 

久米から一言…

 

ご予定が遅れ、申し訳なく思っておりますが、ご辛抱強くお付き合いいただき、工事が始まりほっとしています。また、一部予想外のところがあったとはいえ、ほぼ予定とおり(むしろ調整後の設計のほうが良くなったようにも?<笑>)の内容で進めてていけそうで、良かったと思っています。

 

また、長時間にわたる打ち合わせを、楽しかったとおっしゃっていただき、有難うございました。ろくなおもてなしもできず、ひたすら話続ける数時間でしたがそのようにうかがって嬉しいです。(何も書かれておられませんが…いろいろと私のほうには不手際が多々あったと思います。)

 

戸建の改修の場合は、特に木造は、解体してみないとわからないことが大変に多く、解体後に一度工事をとめて時間をとり、構造の調査と検討を行います。

その時点でようやく補強がどの程度必要かがはっきりするのですが、そのときになって追加見積が出るのはご予算を組まれることを考えると大変です。

そのため、Hさんの場合は、構造補強用予算を、工事見積の中で別枠で確保してもらっていました。

幸い、その予算枠の範囲でほぼ納まりそうな見込みとなりましたが、あけてみないとわからない改修工事は、新築物件よりも臨機応変な対応が必要となり、なかなか難しく、またその分楽しい仕事です。

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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