Hさん 家つくり記録

第2回

 

家を建てるに当たり、私たち家族の理想を久米さんにお話しました。

1.長持ちする家である事。

2.自然素材の木の家にしたい事。

3.断熱性に優れている事。

4.夏はなるべくエアコンに頼らず自然の風が通り抜けること。

5.キッチンを家の中心にする事。

6.家族の気配がいつも感じられる事。

7.花粉症対策や、外出先から遅く帰宅する事もあり、家の中に洗濯物を干したい事。

8.薪ストーブを設置してみたい事。

 

残念ながら限られた予算しかない現実で、正直何を優先し、何を妥協すべきか見極めが必要と漠然と考えていました。但し、税制面でも優遇があり、昨年まで国から補助金が支給されていた長期優良住宅にする事は絶対外せない条件でした。

 

久米さんは、私たちの予算に対する心配を払拭すべく、概算ではなく、精度の高い総工事費用の見積もりを工務店から取りましょうと提案してくださいました。正直、予算を大幅にオーバーすると先に進めないので良い提案だと私たちも同意しました。

 

見積もりは、久米さんの過去の経験から、工務店コンペで一番提案力があり、又、工事費も一番安く、大工さんの腕も確かなS工務店に、特命にて見積もり依頼することにしました。

 

見積書を見せてもらう約束の日になり、不安と期待が交差するなか久米さんの事務所に向かいました。当日はS工務店の方とも初めてお会いすることとなります。いったい幾らになるのか不安もありましたが、久米さんの落ち着いた仕草から、良い条件の見積もりが出来上がっていると期待が深まりました。S工務店の社長と関連会社の社員の方から見積もりにつき詳しい説明を受けましたが、正直初めての経験で、説明を一方的にお聞きすることが精一杯でした。

頂いた見積書は実に精度が高く、外構費の一部(植栽以外)も含まれたものでした。肝心の見積もり金額ですが、予算はオーバーしているものの、内容は私たちの希望を全て叶えてくれる内容になっており納得いくものでした。これからは私たちがどこを削るか(諦めるか)を見極めていく必要があると認識しました。

 

家の形が完全に決まる前に、精度の高い見積もりを工務店から取得することは、私たちの予算に対する不安を払拭し、これからの家づくりをより現実なものに導いてくれました。

 

ところで、妻があるこだわりを持ち続けていました。それは、リビングイン階段でした。

然し、家の敷地の問題から当初のプランはリビングイン階段ではありませんでした。もやもやしている妻に久米さんはリビングイン階段のプランも考えて下さり、それはとても独創的で一般の発想では考え付かない面白いプランになっていました。久米さんは最初に提案したものをAプラン、そのプランに私たちの要望を取り入れ改良した案をBプラン、リビングイン階段のものをCプランと名づけてくれました。正直、B、Cプラン共に素晴らしくとても迷うこととなりました。

 

但し、建つ家は一つです。一階はB、Cプラン甲乙付け難いのですが、2階はCプランの方が良いというのは、久米さんを含めた全員一致の答えでした。

散々迷った挙句、Cプランも良いけれど家の形がシンプルで、見せられた時の最初の感動が忘れられないBプランでいくと決断し、久米さんに報告したところ、実はもう一つ考えていたプランがあり、もう少し時間が欲しいとの意外な回答でした。

 

そして出来上がった新たなプランは思いもよらなかったものでした。玄関の位置を大胆にもB、Cプランから移動させ、敷地の高低差を利用し、玄関に入ると階段を3段上がって、家のダイニングにつながるといったプランでした。敷地は造成地で既に玄関までのアプローチに階段が作られており、その階段を大胆にも利用しない(その部分はコンクリートで囲い植栽スペースにする)プランになっていました。

玄関を動かすことで空間が生かされとても個性的で、妻がこだわっていたリビングイン階段(正確にはダイニングインですが)も取り入れられ、且つ、2階も気に入っていたCプラン同様の作りとなっていました。

 

久米さんも自信があったのか、一押しプランですとの心強いコメントを頂きました。

無論、私たちもこのプランが一目で気に入り、このプランでと即答でした。

 

2012年6月に遂に家の形が決まりました。2月に最初のAプランをご提案頂き、その後何度となく打ち合わせを繰り返し、我が家の娘たちも久米さんの愛犬とすっかり仲良くなりました。

 

そろそろ家づくりも急展開で進んでいくと思いますが、これからが正念場。

予算との熱い戦いが待ち受けています。久米さんよろしくお願いします!!

 

 

久米から一言…

お話では「精度の高い見積」ということですが、

あくまでも、概算です。(笑)

ただ、この工務店さんは何度か見積あわせに入ってもらっているうちに

毎回、よい金額を出してくれるために最近はお願いすることが多くなっていました。

そうなると、私の事務所が大切にしている設計の箇所について

よく分かってこられるので、概算といえども、以前の物件を参考に

かなり詳細な見積を上げてもらうことができたというわけです。

 

読者の方には

基本の設計が固まるまで時間がかかっていると思われると思いますが、

こうした概算見積を依頼したりしている時間があることもあって、

結局、数ヶ月を要しました。

補助金GETのために、年内竣工という厳しいスケジュールで、

今のところ、ぎりぎり間に合うかどうか、

実は微妙なところです…

が、頑張らねばなりませんね!

 

もうすぐ、実施設計後の見積が上がってきます。

どきどきですが…

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

 (記事はこちら)

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

 (記事はこちら)