家つくり記録 Hさん

第六回

 

 上棟式も何とか無事終了し、いよいよ大工さんによる木工事が本格的に開始されることとなりました。これまで久米さんから頂いた分厚い設計図を眺め、素人なりにいろいろと想像を膨らませていましたが、遂に平面図が立体として現れるところまでやってきました。

 竣工予定は3月中旬ですので、竣工まであと4ヶ月。これからどんどん設計図通りになっていく「我が家」がとても愛おしく思えます。 毎週末に建築現場に出向くのが習慣になっていますが、それがますます楽しみになってきました。

 

 又、短いサイクルで久米さんから定期的に送られてくる工事監理報告書が、写真付きでコメントがとても分かりやすく、毎回到着するのをとても楽しみしています。送られてきた報告書は大切にバインダーにファイリングさせて頂き、妻といつも眺めています。

 

 

 その様な日々の中、貴重な出来事がありました。それは、久米さんからのご提案により実現できたのですが、地元の高校生が建築中の現場を授業の場として使用するということです。

 当日は私も参加させて戴いたのですが、現場では既にS工務店の手によって、建築工事の写真を大きく引き伸ばしたものが数枚ディスプレイされていました。S工務店の会長と現場責任者のTさんがそのパネルを使用し、木造建築(我が家)が出来上がる過程を丁寧に分かりやすく、高校生に説明されていました。

高校生の皆さんは真剣にS工務店や久米さんの説明を聞いて、私も改めてこれから出来上がる「我が家」につき理解を深めることが出来、とても思い出に残る出来事となりました。

 高校生と接する機会など皆無で、それも大勢ですので、正直圧倒されました。妻及び、子供たちが、自身の都合で参加できなかったのがとても残念でした。

建屋が完成し、いつしか家の前を通る機会があったときに、この時の出来事を思い出していただけたら嬉しく思います。

 

 

 木工事も順調に進み、最初に決めたことは、お風呂の仕様です。予算との兼ね合いから、メーカーと仕様は、予めご提案を受けて絞り込んでいましたので、比較的スムーズに決定することが出来ました。

 お風呂もたくさんのメーカーと仕様があり、とても迷うところですが、上を見たらきりがありませんし、必要最低限のものがあればいいと思っていますので、それなりの仕様としました。但し、こだわりとして開口部(窓)を大きくして頂き、目隠しとして窓の外にガラリをつけて戴く仕様となっているので、完成するのが今から楽しみです。

 

 

 家の中は、棟梁のG氏が孤軍奮闘、一生懸命丁寧な仕事をされていました。G氏の仕事ぶりを、久米さんが称賛されていましたので、私達も安心です。最初は家の周りはブルーシートに囲まれていましたが、徐々に壁が出来て、家の形になってきました。

 

 

 我が家の特徴の一つとして、断熱を外断熱にしたことが上げられます。今から約10年前に外断熱のことを書籍で知る機会があり、もし家を建てる機会があれば、外断熱にしたいと思っていましたが、コスト面もあり無理だなと諦めていました。

 然しながら、この希望は、久米さんの事務所に設計をお願いした段階であっさりと叶えられました。設計計画当初から外断熱仕様となっており、S工務店が手掛ける住宅は全て外断熱となっていたのでした。

 S工務店から頂いた外断熱のPR用のDVDを家族で見たところ、下の娘はその商品のキャッチフレーズである「すっぽり断熱」がとても気に入ったのか、ことあるたびに「新しい家はすっぽり断熱だよね」と言っています。外断熱の効果が今から楽しみです。

 

 

 又、事前に、久米さんとの打ち合わせで決定していた事も、工事が進むにつれていくつか変更する事態もありました。

 一つは窓ガラスです。設計当初は全て複層ガラスとしていましたが、雨戸の設置を考えていないため、防犯面を考慮し、一階の防犯上不安な開口部だけは、防犯ガラスに変更しました。

 更に、南から北への風の通り道を考え、玄関の上にも小さな窓を作ることしました。

 しかし、頭が痛いのが係る費用の捻出です。苦肉の策として、一階リビングの掃出し窓をフルオープンタイプから、引違タイプに変更しました。これで何とか費用を捻出することが出来ました。久米さんのこだわり部分が削られてしまいましたが、申し訳ございません。

 

 

 ある日、現場を見に行ったところ、サッシの型枠が現場に搬入されていました。これが家に収まれば、ますます家らしくなるのだなと思いました。又、「すっぽり断熱」の工事も順調に進行しており、下の娘は大喜びです。大工さんの人数も3名に増え、工事も竣工めざし急ピッチで進んで行っています。

家が出来上がっていくのはうれしいのですが、この瞬間がもう二度と味わえないと思うと少し寂しさも込み上げてきます。

 今も現場では工事が進捗しており、つつがなく新たな年を無事に迎えることが出来ましたことを、久米さんはじめS工務店の皆様と、工事に関係頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。

 

 

 これからは、いよいよ家の中の什器・備品及び、内装・外装と頭と予算を悩ますことが待ち受けています。人生最初で最後のイベントと思い、久米さんのご意見を尊重し、乗り越えていきたいと思います。

 寒さが一番厳しい季節となりましたが、これからも体調を崩されることなく、安全無事に工事が進んで行くことお祈り致しております。           

 

 

久米から一言…

 

いつも、私を立ててくださる内容の家つくり記録で、大変恐縮です…(照)

 Hさんのお気遣い、痛み入ります。

 

さて

工事契約のときは、(どの物件でも概ねそうですが)

予算に合わせることを一番にとらえているため、必要なものぎりぎり

ご希望に合わせて調整し、決定しています。

ただ、私の中では、

「可能ならばこれは後でまた、ご相談しよう」と思っているものがあったり

何かプラスのものがでてきた場合のために

マイナスできるところを候補として考えていたりします。

ご丁寧にお詫びまでいただいてしまったサッシの変更のことも

当初からそんな風に考えていたものですので

気にしていただくことはありません。(笑)

通風のための玄関上の窓も、必ず後でご相談しようと思っていたものでした。

(この窓を設置する増額のかわりに

無くても大丈夫と思う小庇などをいくつか減額したりしました。)

 

なんでも言えることですが、設計作業も例にもれず

時間をおいて眺めると

不要なものが見つかったり、考えが変わったり

逆に新たに気が付いたりすることがあるものです。

建築主さんも、私たちも、常に見直しを(可能な範囲で)忘れずにいることが

より良い家に完成するために必要です。

 

工事監理は

単に図面通りに施工されるように確認するだけでなく

もっと良いようにならないか、を

現場の人たちからも意見を聞いて、打ち合わせしたり

現場を見ながら、改めて設計の細部を再考したりすることも

含まれています。

 

最後になりましたが

学生の見学をさせていただいて

本当にありがとうございました。

大切なお家を学習の場に提供いただき

心から感謝申し上げます。

(私は数回、高等学校へセミナーに行っていました。そのうちの1回でした。)

 


 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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