家つくり記録 Hさん

第1回

 

 私たち一家は転勤族です。

 現在の居に移って5年。今まで住んできた家は、自己所有の他、急に家主が帰ってきて退去、マンション内の事故で急遽引越しなどのトラブルも含め7軒に達します。しかし、結局のところ何処に定住するかは漠然としながら過ごしてきたように思います。

 ですが、子供達が学童期を過ごし慣れ親しんだ今の地域にこの先もずっと住み続けたいとの強い思いと、ローンを組むにはギリギリの年齢になってきた事もあり、思い切ってこの地に永住しようと決心しました。

 

 まずは、10年前に東京都内で購入したマンションの売却から始動です。

 売出しが東日本大震災の直後で、正直思うような価格での売却は難しいと考えていました。しかし、駅近だった事も手伝い、自分達の納得いく金額で売却することが出来、次に進む算段が整いました。

 上の娘が中学に上がるタイミングで我が家を購入すると決意表明し、マンション売却でもお世話になった不動産会社のエリア営業マンとの家探しが始まりました。

 ほぼ毎週末の営業マンとの家探し・・・しかし残念ながらこれといった物件は出てきません。

 当初、中古の戸建てをリフォームするのも有りかと考えていましたが、親戚がユニークな家を建てたのが刺激となり「土地を探し、自分達の納得いく家を建てたい」との意識が芽生えました。

 

 本格的に土地探しを始めてから7ヵ月目、たまたまネットで目にした土地が気になり、今までと違う不動産会社と連絡を取りました。

 気になる土地は、環境・土地の広さ共に満足いくもので、駅からもどうにか歩ける距離。バス停もすぐ近くです。実はその土地の存在は以前から知っていましたが自分達には予算オーバーと諦めていました。しかしどうにか手が届く価格までになっていたその土地に対して、これ以上好条件のものはこれから先出会えないだろうと、ネットで見つけてわずか1ヶ月足らずで土地契約まで進んでいました。

 

 

 ところで、我が家には家族全員が惚れ込んだ或る住宅メーカーがありました。

住を愉しむをコンセプトにしているメーカーで、いつかこんな家を建てたいと云う私たちの様なファミリーが何度もモデルルームに遊びに行けるというところ。人によっては本当に建て始めるまで5年間通い続けたという方も・・・。我が家も足掛け3年ほどモデルルームに出向き、そこの営業マンに土地探しの相談もしていました。もちろん土地契約前後も現地まで足を運んでもらい、家族全員「やっとあの家が建てられる」とわくわくしたものです。

 購入した土地は北と東に道路、南に大きな駐車場があり、東側南側どちらからも景色を愉しめそうな立地です。しかし、駐車場が将来ずっと駐車場のままである確証はありません。

 いつかマンションか戸建てが建ってしまうと、南向きにベランダを配する住宅メーカーのプランではせっかくの眺めはシャットアウトされてしまう恐れがあるのです。その上、真四角ではなく少々変形している土地である為、家を建てるには土地を整形し直さねばならず、整形したところで南にしか開口部を採っていない家からの将来の眺望に不安を感じました。

 

 どこかしっくりこないまま設計プランの打ち合わせも進んでいたころ、改めて夜の土地を見に行きました。何も建っていないその場所からは東にかけて素晴らしい夜景が眺められました。

 その夜景を眺めていると、家に合わせて無理矢理建てるのではなく、土地に合わせて家を建てるべきではないのだろうかと夫婦の意見が一致。長い間お世話になった住宅メーカーの方には本当に申し訳なく感謝の一言に尽きますが、やめるなら今が最後のチャンスだと、思い切って仕切り直しする事にしました。

 上の娘が中学に入るまであと1年・・・私たち夫婦にとっては一生に一度の家づくりです。

 ハウスメーカーでもなく、工務店でもなく、一番時間と労力と根気を要するかもしれませんが、自分達の希望を叶えてくれそうな建築家との家づくりも有りなのかと思い始めました。

 

 偶然にも夫婦それぞれが各自のPCを使って、同じ日に久米さんのHPを覗いていました。

 一番長く家で過ごす事になる妻が、女性の建築家なら細かい部分にも目が行き届いた設計をしてくれるのではないかと期待しコンタクトを取らせて戴きました。

 何度かのミーティングの後、久米さんに提示された、自分達の固定概念を払拭する様なラフプランに驚きと感動を覚え、委託契約を結ぶに到りました。

 

 久米さんは少しでも不安材料があれば必ずこちらに確認を取りながら事を進めていって下さいます。私たちが購入した土地の造成工事の件でも難点を細かく突き詰めてお話しされ、もしかして変な土地を買ってしまったのかと妻が一時パニックに陥る事もありました。(結果、事なきを得ましたが)

 ひとつひとつ確実に確認しながら事を進めていかれる姿勢は、私たちにとってこの人となら自分達の望む家が建てられると確信するに値すると感じます。

 やっとスタート地点に立ったばかりの家づくり。1年後どんな生活をしているのか、わくわくしています。

 

久米から一言…

Hさん お忙しい中、家づくり記録を有難うございます。

プランを気に入っていただいてとても嬉しく思っています。

どうぞ末永くよろしくお願い致します。


- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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