Kさんの家作り記録

NO.2

 

 幸か不幸か、この選択時期が9月でした。半期の期末ということで、同時並行で検討したハウスメーカー2社からの販売攻勢は大変なものでした。当時を振り返ると、よくまあこれらの販売アタックにすべて対応し、真剣に検討し、結局断れたものだと思います。ハウスメーカーは、こちらが要望を変える度に、素人目には詳細な変更プランをすぐ出してくるし、見積も細かい所まで出ているようだし、9月末までのお値段ということでかなり値引いた予算を提示してきましたし、さらに、これ以上予算が高くなることはありません、と明言されると、こちらはとても安心します。でも、担当設計士は選べません。展示場を含めた様々な宣伝費がこの価格には入っているのだという思いも、勧誘される様々な住まいのイベントに参加する度に強くなりました。


 でも、断った究極の原因は、ハウスメーカーが提示してくれたプランがどうも気に入らなかった、ということに尽きると思います。こちらの希望に添ってどんどんプランを変更してはくれるのですが、それは私の希望が図になってでてくるだけで、顧客の希望を吸収消化した上で、プロとしての知識・技術・センスを投入した、ちょっと驚くような、ここに住むことが楽しみになるというプランを見せてもらえなかったということです。久米さんに初め提示してもらったプラン2つは、いずれもそこに一度暮らしてみたいという気になるものでした。夢を強く感じた方に結局決めたということでしょう。


 とはいえ、すんなり久米さんにお願いしようと決まったわけではありません。主人は、見積りを最初からきっちり出すハウスメーカーを最後まで希望しました。また、久米さんサイドで、北側斜線の制限についての、真北の振り方の検討がいささか足りなかったようで、最初のプランにこの制限が盛り込まれておらず、これを考慮に入れると、最初にとても気に入った提示プラン通りには実際は建てられないということも主人は強く主張しました。勿論有償ですが、さらに詳しいプランを描いて貰い、それから久米さんに頼むかどうかまた検討するというやり方もありました。が、それまでに私たちがいろいろした質問に対する久米さんの答え方、対応振りから、最初のとても気に入ったプランから少しずれることがあっても、きっといい家を造っていくことができるに違いないと考え、もうこの時点で久米さんにお願いすることにしていいのではと私は思いました。「制約や制限というものは工夫次第で返って利点や魅力に変わっていくものですよ」という久米さんの言葉に強く共感したということもあります。


 結局、一番大変そうだと思っていたやり方を選ぶことになるわけですから、夫婦力を合わせてことに当たる体制にスタートから持っていかないといけません。そのためには主人も十分納得しないといけないと、2人でいろいろと話し合い、けんかもしました。最初に紹介されてから約1ヵ月半後にようやく久米さんに設計監理をお願いすることに決めたのですが、その時には既に相当疲れてしまっていました。

 

久米から一言… 

 

ちょっと言い訳を…(笑)

はじめに提案させていただいたときに、施主さんからお預かりした敷地の資料では、真北の角度がはっきりと示されているものではなく、私もその点をちゃんとシビアに捉えて、真北の振り方によって計画が変わることをきちんとお伝えしておくべきだったと悔やみました。

勿論、私自身の計画が有利側で行っていたことも、反省。

でも、その後、建物の間取りを変更せずに、斜線をかわすプランに工夫・検討していきました。

安易に建物を小さくしたりしないでスペースを有効利用できて、良かったと思っています。

(でも、この記録を読んで、再び深く反省)

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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