Kさんの家作り記録

NO.3

 

 気分一新、気合入れなおし、という意味もあり、久米さんとの契約・打ち合わせを本格的に始める前に主人と2人でスペイン旅行に出かけました。行く前に久米さんから洗面器やタイルでいいのがあれば買ってこられるのもいいですね、と言われ、何でそんな大きなものを買って来るのかしら?とその時はピンときませんでした。これも事前にアンテナを広げて情報を収集しておけばいろいろな機会を有効に活用できたのに、という失敗例かもしれません。あとでスペイン製のタイルや洗面器になかなか素敵なものがあることをカタログで発見しました。向こうでタイルを少し買いましたが、これは耐水性に問題があるものだったようです。

 

 旅行から戻り10月中旬からいよいよ久米さんと家造りスタート。まずは同じ一級建築士事務所で芦屋事務所の斉木さんが久米さんと供に挨拶に来られ、サポート体制があることを確認し、心強く思いました。小さな事務所に頼むわけですから、もし久米さんが途中で病気になったら?なんてこともやはり考えてしまいます。また、ぜひ建築士を信頼して任せてくださいという話もありました。これは最近よくある、建物関連のTV番組の、施主感想コーナーでもよく耳にすることです。これが強調されるぐらい家造りの過程は大変なものがありますよ、ということなのかもしれません。


 久米さんとの正式契約の後、いよいよ打ち合わせスタート。まずは大まかな基本設計を決めることから始まりました。北側斜線等の制限を考慮に入れた3つのプランを提示してもらい、それからまず1つを選びました。うちは家相も風水もまるで気にしていないのですが、万が一将来中古で売却とか、賃貸で貸す可能性も否定できないので、世間並みの一応の基準ははずさないこととしました。2階にLDKを持ってきてなるべく広々空間が欲しい・吹き抜けが欲しい・主人と私にそれぞれ書斎コーナーが欲しいといった希望を基に基本プランを選びました。3階は一度外に出ないと部屋に入れない子供部屋というプランも提示されたのですが、これはちょっと…とボツにしてしまいました。今思うとあれは住んでみれば楽しかったかもなんて少し残念に思います。せっかくおもしろい提案をしてもらっても、つい無難な線を選んでしまうものです。


 木の家にするか、鉄骨にするかも迷いました。前に6メートル道路があり、今はとても静かですが、将来交通量が増加する可能性が考えられ、その時に揺れに強いものという点と、2階のLDKに柱のないすっきり空間ということで重量鉄骨を提案され、それに決めました。幸い私たちは海外に居て経験していませんが、この兵庫県が95年に大地震に見舞われたことも勿論考慮に入れて決めました。久米さんが同じことを何度でも嫌がらず根気良くわかりやすく説明してくれたことは、こうした基本的な大事なことの選択で重要なポイントでした。あとあと細部の選択に入る段階でも、この時期の説明があればこそすんなり決められる、ということもあり、各段階でよく説明を聞き納得し次に進むという過程が大切だと思います。


 主人の仕事と私の不定期な仕事のせいで打ち合わせはメールをフルに活用し、大体いつも週末に、久米さんにうちまで来てもらい、新しい図面を見ながらいろいろ説明を聞きこちらの希望・意見・質問をぶつけ、また次の週末にそれを盛り込んだ新しい図面を見て、というふうに打ち合わせは進みました。施主にとっては至福といってもいい期間です。まだ具体的な予算の事が頭の中に入ってきていなかったので、この時は夢と希望を言いたい放題、参考になるものはないかと住宅雑誌をあれこれ漁りと、ルンルン気分になれました。ときたま住宅雑誌で「プランを1年かけてじっくり練り」なんて文章を見かけますが、この、あれこれ迷う楽しさに浸りきったせいじゃないのか、なんて勘ぐりたくなるぐらいです。

 

久米から一言… 

 

この時期が楽しいのは建築主の方だけではありません。私たち、設計をする者も、同じように計画時期は楽しいものです。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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