Kさんの家作り記録

NO.5

 

 大騒ぎの原因は、降って湧いた主人の海外転勤話でした。少なくとも6年ぐらいの長期という見通しの話で、大学2年と高校2年の子供達の進学・就職のタイミングを考えると、これまでのように家族揃っての赴任は無理で、別居生活が長期になるのは必死。そうなると今家を建ててしまっていいものか?という迷いが当然出てき、賃貸の方が予想外の変化(将来子供達は下宿し私が赴任先に行くこともあり得る)にも対応しやすくていいのでは?という考えも湧きました。マンションを買うという選択肢も今一度考慮しなおすべきかとも思いました(管理が一軒家より楽そう)。

 

 設計図はできたが現物はまだ出来ていない、ここはひとまず家造り続行か否かをじっくり考えようということになり、早速久米さんに事の次第を連絡し、大変驚かれましたが(そりゃそうです。当人の私たちもたまげました)作業を一旦ストップし、会計士のお知り合いを紹介くださり、税金等のことも相談できるように配慮いただきました。うちの場合、東京の家を処分して関西で土地を購入することから今回の家造りを始めましたし、こうした実務的ヘルプはとてもありがたいものでした。


 いろいろな方々に相談し意見を求めました。「住」の持つ意味と、これからどう生きていくつもりかということを考えることになりました。結局、海外へ行くかどうかは主人の希望次第(私は反対だと言いましたが)、単身赴任は覚悟の上、そして賃貸住まいで身軽な状態を保つより自分の気に入った家を持ち「世界のどこにいても帰ってきたい拠り所」を作る方がこれからは大事、という思いに至りました。また、ここまで練り上げたプランだし、工事監理は私がいるのですからメールやFAXのやり取りでもやっていけますよ、という久米さんの言葉も大きな励みになったことは確かです。

 約1ヵ月後、家造りを続行することを決めました。しばらくして主人は転勤話を断りました。私は安堵のため息をつき、さあまたこれから頑張るぞと気持ちを新たにしたものでした。(きっと久米さんも)


 こうして約1ヶ月進行が遅れましたが、その間に電柱の設置のことで関電とのやり取りは続行しましたし(現場が区画整理地区でたまたますぐそばに電柱がなかったため)、キッチンと床暖房の研究と選択も少しずつ続けていました。


 きっぱり海外への話しを断った後、久米さんとK建設との打ち合わせも進み、工事見積書を4月下旬に受け取ることになりました。この間の久米さんとK建設の話し合いの議事録もすべてメールで久米さんから受け取りました。どんぶり勘定で工務店、ハウスメーカー、(ひょとしたらどこかの)設計士にお任せではなく、何が話し合われどう事態が進行しているかをきちっとフォローできることは、とても大切なことだと思います。煩雑で大変な面もあることは確かですが、これから何十年か住む自分の家のことです、「納得」が非常に大事だと思います。


 さて、出てきた2度目の見積は3,000万円を越えていました。昨年度内に出た最初の見積を大幅超過です。一難去ってまた一難の感もあり、最初の見積のあと減額したはずだったのにと我ながら首を傾げたりもしましたが、「設計内容を見て予算が上がったのかと思いました」などとK建設に言われてしまいました。気持ちを入替え、真剣に取捨選択をすることになりました。最初の見積から設備類はかなりいいものを盛り込んでいたこともあり、あまり落ち込まずに削れるものから始めて、コストダウンに向けての作業がふたたび始まりました。

 

久米から一言… 

 

ご主人の転勤は取りやめになって本当に良かったです。(笑) 「世界のどこにいても帰って来たい拠りどころをつくる」と言われたK子さんのメールには正直をいって、私はちょっと感動しました… 家ってそういうものなのだとつくづく改めて感じたものでした。名言ですね。 

さて、2度目の見積りまでのしばらくの間に、相当内容が増えているのは、実は私は分かっていたのですが、どうやらK子さんたちには分からなくなってしまっていたようです…  

確かに初めから一旦少しは減額したのですけれども、その他に結局、設備だけでなく、窓が増えたり家具が増えたり…、この時期は、打合せが楽しいとついあちこちあれもこれもと造作が増えるものなのです。 

コストアップになりますよ、とその都度お伝えしていても、まとまって金額が出ないとなかなか誰しも実感できないもので、こういうプロセスは必ず皆が経験するものです。

 

家造りって、楽しいけど、実際は予算と現実の戦いですから、本当にエネルギー使います…  それを無事に乗り越えるためにも、コミュニケーションは大切です。

K子さんは本当にきめ細やかに連絡を下さるので、助かりました。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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