家づくり記録 Nさん

NO.2

 2006.05.29

3.土地探し

 今住んでいる小学校区内で、50から60坪の広さ、できるだけ駅に近いなどの条件で、ネットやチラシで気になる物件を見つけては問い合わせるうちに、ある不動産会社から、まだ広告に出す前の土地に、希望にぴったりのものがある、と連絡があったのは、2004年春でした。行ってみると、面した道路が狭いのが気になるものの、広さは十分、日当たりもよく駅から近く、値段もまあまあ想定内、知り合いにご近所の様子などを聞き、ここに決めようか、となりました。

 久米さんを知ったのもこのころでした。住宅展示場も一応のぞきましたが、心惹かれる家はありません。設計事務所との家作りは、あこがれでした。私たちでもできるのか、誰に頼んだらいいのか。ネットサーフィンをしているうち、たまたま久米さんのサイトにたどり着いたのです。変に凝っていて開くのに時間のかかるほかの建築家さんのサイトと違い、気後れしがちなこちらの立場に立って、設計事務所との家作りを一からわかりやすく説明してあり、好感度大でした。自然素材の考え方も共感できたし、作品例もすてき!なによりお写真を拝見するとやさしい笑顔、頼れるお姉さんという感じで、片思いを募らせていました。遠い滋賀県で仕事をしていただけるかどうか、思い切ってメールで問い合わせたところ、快諾のお返事。久米さんの素敵な事務所にお邪魔して、いろいろなお話を伺い、お願いしたい気持ちを強くしました。

 この話が進んでいれば、いまごろ新しい家に住んでいたことでしょう。結局この土地は、いざ契約の段になって、重要事項説明の中に「聞いてないよー!」ということがあり、売主側の説明に納得できず、契約を取りやめたのです。

 その後、いくつもの土地が私たちの前を通りすぎていきました。主な不動産会社はほぼ回りつくし、長く売り出されている土地は、チラシで町名と広さを見れば現地の様子が浮かんでくるほど。海外旅行中の久米さんに土地の写真をメールして見てもらったり、わざわざ滋賀まで来ていただいたりしたこともありました。土地の形状に問題があったり、騒音がひどかったり、なかなか、ここに住む、とイメージできる土地に出会えません。そうこうしているうちに、なんと私が3人目を妊娠していることが判明! 土地探しは中断を余儀なくされました。

 

4.土地決定

  土地との出会いは縁だ、といわれます。本当にそのとおり、と深くうなずける出会いでした。 

 チラシには本当にいい土地は載っていない、ともよく言われます。でもその土地との出会いは、土曜朝恒例、大量の不動産チラシチェックのさなかでした。2005年も終わりに近い冬の初めです。同じ小学校区内でも、マンションとは反対側の山の手に広がる住宅地で、第1種低層住宅専用地域の古家つき58坪。私たちの希望をよく知っている不動産会社の担当者に問い合わせたところ、あまりお勧めでない様子。土地探し再開の手始めに、見込み薄かもしれないけど行ってみよう、FAXされてきた地図を片手に、軽い気持ちで出かけました。

 北東の角地、北側は道路を挟んで小さな林のような斜面があり、緑の季節は気持ちよさそうです。接する道路は2本とも十分な広さ、高速道路に近いのに、驚くほどの静かさです。最初は車の中から眺めただけでした(寒かったので)が、私「ここよくない?」、夫「うん、いいな…」と夫婦そろって好感触。その後子供たちも誘い何度か通って、ここに住めたらいいな、と思えてきました。久米さんにも図面や地図を見てもらい「いい土地です」と言っていただき、ほっとしました。欠点に思える北側道路も実は建築的に有利で、お勧めとのこと。やっと土地が決まった、これで家作りへ一歩踏み出せる! 心躍る新しい年の始まりでした。

 と、思ったらもうひとつハードルが。土地を買うにはお金を借りなければなりません。土地代金を借りる時点で、建築費も含めたローンの審査を行うため、建物のプランとその見積もりが必要、といわれました。これからじっくり久米さんとプランを考えていくところなのに、1ヵ月後にそんなもの出せるわけがありません。幸いにも土地の持ち主の方が、これも何かの縁だから数ヶ月待ってもいい、と言ってくださいました。久米さんもちょうどお手すきの時で、すぐにプランに取り掛かっていただくことができました。ローンの審査には建築確認申請や工事請負契約も済まさないとだめ、という銀行もありましたが、建築費の概算でいいと言ってくれるところを不動産会社の担当者が探し出してきてくれました。せっかく土地が決まったのに、一時はこのままでは計画は進められないかも、と暗い気持ちになったものです。

 設計事務所で家を建てることは、かなり一般的になっていると思いますが、金融機関の方はまだまだ、ハウスメーカーや建売の家作りしか想定していないようです。じっくり計画してよい家が建つほうがお金を貸す側にもいいことではないのでしょうか。もちろん自己資金が十分にあれば問題ないわけで、資金計画に関してはこちらのリサーチ不足、行き当たりばったりの姿勢が災いして、久米さんにもたくさんご心配をおかけしました。本当は最初に押さえておくべきところでした。というか、ここでこんなにばたばたとあわてる人は稀でしょう。土地探しに時間がかかった分、家作りの妄想は膨らみましたが、肝心のお金のほうは、なんとかなるさと後回し、反省しています。とにかく周りの方々のご好意や尽力が、とてもよいタイミングでかみ合って、この土地との縁をつないでくださったのだと思っています。土地を決めたら、あとからもっといい土地が出てきて、ああやっぱりこっちにすればよかった、と悩むのではと想像していましたが、今はもう何が出てきても(?)ここしかありえない、というくらいの気持ちです。何度ダメを出しても嫌がらずに付き合ってくれ、ローンの件でも駆け回ってくれた不動産会社の担当者さん、そしてあてにならない私たちの家作りのスタートを気長に待っていてくださった久米さんに、深く感謝しています。

 


久米から一言… 


お話を読むと、色々思い出されて懐かしい気持ちになります。

(まだ、工事も始まっていないのに!)

お会いしてから設計をスタートするまでに2年ほどかかったということですね。

 

それにそういえば、スペインに旅行に行っているときに、ご連絡をいただきました。

ちょうどパソコンを持っていっていたのでメールを拝見できたのですが…(笑)

楽しい思い出です。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

 (記事はこちら)

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

 (記事はこちら)