家づくり記録 Nさん

NO.4

2006.08.09

6.施工業者決定まで

  話は前後しますが、プランを練り、久米さんが図面を次々と仕上げていく一方で、施工の工務店さんを決めなければなりません。こちらにこれといったあてがなく、久米さんも滋賀での仕事は初めてです。工務店を選ぶ相見積もりの過程は、先輩方の家作り記録では大きな山場のひとつです。インターネットや雑誌などの情報をもとによさそうな工務店に、久米さんがメールで問い合わせてみました。が、狭い地域で、熱心に木の家作りを進めている工務店さんは、「仲間同士」のような関係で、相見積もりで競争するのはちょっと、という感触でした。

 久米さんのお知り合いから、よい大工さんを紹介していただきました。設計事務所との家作りをよくわかっていて、腕も確かというお墨付きです。現場も見学させていただきました。久米さんは特命工事は一度しか経験がないとおっしゃいます。私たちは、この大工さんに特命でお願いしても構わない、とお伝えしました。ただ見せていただいた現場が、予算も工期もかなり潤沢なようで、同じようにしてもらうのはちょっと無理、という不安はありました。

 迷ううち、浮上してきたのが、M工務店さんです。夫の知り合いで、知り合いだからこそ、候補に挙げるのを躊躇していたところもありました。設計事務所との仕事もこなし、重厚な昔ながらの農家から、かなりのローコスト住宅までいろいろな家作りの経験をお持ちでした。建築中の現場や手がけたお宅を見学させていただきました。

 Mさんに限らず、これまでお会いした家作りの仕事をされる方は、(久米さんを筆頭に)どなたも本当に研究熱心で、驚くほどです。次々と出てくる新しい技術や、建材、設備類を使いこなして、よりよい家作りに生かすには、当然のことなのでしょう(仕事に向かう姿勢として、わが身と引き比べて、至らなさに恥ずかしく思います)。Mさんと久米さんの交わすお話は、専門的なことはちんぷんかんぷんですが、ホタテ壁については興味深く聞きました。最初なまこ壁の仲間かなにかと思っていたら、ホタテの貝殻を粉にして、のりと混ぜて塗り壁に使うのだそうです。手軽にクロスの上から水に溶いて塗ることもでき、よく聞く珪藻土などより優れた点が多い、とのこと。ぜひ我が家にもホタテ壁を、と思いました。

 そんなふうにいろいろなお話を聞き、実際に住んでおられる方の満足そうな様子を拝見し、M工務店さんに特命でお願いすることに決めました。相見積もりで安くできることもあるけれど、特命なら設計の段階でも施工者の意見を聞くことで、後戻りをあまりせずに進められる利点もある、とのこと。Mさんも広い土間のあるプランを気に入ってくださいました。最初の見積もりは幸い大きな開きはなく、大幅な設計の変更はなし。それでも少しずつ、落としていく必要があり、Mさんからも減額の提案を聞きつつ、絞れるところは絞ったつもりです。

 

 6月のはじめに無事、土地の決済を終えました。隣地の建築物の一部が越境しているという問題があり、久米さんからアドバイスを受け、こちらにとって十分な覚書を交わすことができました。気がかりだったマンションの売却も、広告などを打つ前に、半年以上先の引渡しにもかかわらず、最初に部屋を見に来た方に、そこそこの値段で5月中に決まってしまいました。6月下旬にはいよいよ古家の解体が始まりました。解体工事の前には、久米さん、Mさん、解体工事のWさんと私でご近所に挨拶まわり。よい方ばかりで安心しました。

 

久米から一言… 

 

雰囲気のわかりやすい地元と違って、滋賀県での工務店さん探しはいささか困難でした。

紹介してもらったり、自分たちで調べたりして工務店さんを見つけるところまではさほどのことでもありませんが、その工務店さんの仕事の進め様を見極めるのは中々難しいものです。

ましてや、途中からわかってきましたが、色々な面で私の地元とは違う様子…

さて、ここまでは大体順調なのですが…(笑) このあとどうなることでしょうか…

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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