家づくり記録 Tさん

NO.5

 

 引っ越しを終え、解体が始まります。解体費用も工務店さんからの紹介で、直接解体業者と契約する形を取り、コスト圧縮も図れ助かりました。

 解体前には今まで住んだ家はまるで廃墟のように私には思えたのですが、家内が「壊してしまう前に、子供の友達をみんな呼んでひと暴れさせよう!」と”頑張ったおうちの有終の美を飾る会”を2日にわたって開催。家の中で比較的きれいな2階の一部屋をまるごと「落書き部屋」としてクレヨンで壁に落書き三昧、障子はバシバシ破って堪能。

 もう一部屋は「粘土遊び部屋」として開放し、好きなように遊ばせたそうです。

子供たちは思う存分遊べたそうで、この上なく喜んでいたそうです。1階は小さい子供と親たちのサロン。近所には相当迷惑だったと思いますが、玄関に靴が入りきらない程の盛況だったようです。

 

 ひとしきり堪能した後は解体が始まります。 5日程度で更地に。 あっという間です。
 これで一時代が終わりました。 というと大げさですが、やはり家内には感慨深いものがあったようです。

 私はこれといって思い入れも無く、こういうことには鈍感なのでなんとも思わなかったんですが。

 解体後はボーリング調査を行って頂きました。 このあたりは昔は田んぼでそれを埋め立て以前の家を建てたそうです。 それから30年経って今に至るのですが、そういう背景を知っていたため地盤の弱さはある程度覚悟していました。 地盤改良費用も百万以上はかかるだろう、と想定していましたが、この金額が出て行くのはつらいところでした。

 が、調査の結果、以外に地盤がしっかりしてるとのこと。 もう、ホント嬉しかった。 「あぁ助かったよ~」と胸をなでおろしました。 実はこれ以前に残金と予想必要額を再検討していたら赤字になっていたのです。これで赤字が完全に解消できるとは保証出来ませんが、何れにせよこの百万弱は後に利いてくるでしょう。

   
 さて、家の設計の話に戻ります。 工務店の選定は相見積を数社からとるスタンスで最初は行ってましたが、予算に限りがある事もあり、「ここなら安く考えてくれるし、ここの社長は木を愛している!」と久米さんからご紹介いただいた工務店に絞り、特命で進める事に。
 分離発注など色々あるようですが、後々の事を考えると金額だけ見てるようではいかんと思い、また特命の方が本当にいい家を建てる近道かと思い、工務店の選定は殆ど自然に決まって行きました。
 一番の決め手は・・・それは後日公開。(結構単純な理由。)
 
 そのあと、具体的な見積と予算に向けた減額プランでの調整が始まります。
 色々削りました。 過程で「そもそもこの予算で家立つのか!?」と心配になることもままありました。 これは追加・これは削減・ここは変更・・・・。 極めつけは外壁の選定。
 当初、外壁は吹き付けでいくことしか考えて無かったのですが、金額調整していくとどうしても予算超過となり、サイディングでいかざるを得ないというところにまで来てしまい、またまた久米さんに再設計をお願いする羽目。 ここでも大変苦労をかけてしまいました。 とにかくプランが固まるまで、実に時間を要しました。
 工務店の方にも外壁の雰囲気を見せて頂くため、わざわざ車を出していただいて一緒に建築中の家や過去に施工したお宅を見せて頂きました。(幼児連れの我々のために、大型ミニバンをわざわざレンタカーで借りてくださったようです。その心配りに感謝。)
 
 久米さんと間取りを考え始めたのが2008/9~10頃から。そこから納得できる形になったのが5月中旬。実に8~9ヵ月かかり、納得できる家の形が見えてきました。

…確か、この場所に決めた時もそれくらいかかったかなぁ…。

 

久米から一言…

 

ご契約いただいたのは、2008年12月なので、実際のところは設計期間は半年弱、というところでしょうか。ただ、今回は、Tさんのお話にもあるように、工務店さんを予め決めて、一緒に意見をもらいながら減額変更を入れたりしました。相見積ならば、この減額変更が、設計完了後に行われるので、今回、見積調整のための設計変更(これは工事監理業務に含まれる作業です。)も含んで半年弱と考えると、むやみに長すぎるという期間でもありません… もっとも、建築主さんにとっては、本当に長く感じられたことでしょう。

 

外壁の変更は施工方法が全く異なるやり方になったため、建物の各部取り合い、納まり(特に雨仕舞)を考えて、全体に形を少し見直させていただきました。

設計変更は「これくらいは…」と考えて安易に行うと、細部に影響が及んでしまうことが沢山あります。特に設計を担当した本人抜きでそれを行うと問題が生じることもしばしば…

(ずっと昔まだ設計事務所勤務だったころ、担当物件にそういうことがあり、結局部屋が使えなくなったことを思い出します。)

今回は、巧く変更できて、それをT様にもご了解いただけたので、良かったです。

 

施工をお願いしようと考えた工務店さんとはこれまで何度か相見積でお付き合いしてきた結果、T邸には一番よいのではと思って依頼することをお勧めしました。

 

自分自身としては、設計事務所が紹介(というよりも、決めている)施工会社の工事の建物において、実際に色々な不具合や問題が生じているのを数多く見てきているだけに、こういうやり方が必ずしもよいとは、世間で受け止められていないことを承知していました。(また私も長年そう考えてきました。) が、Tさんには私をご信頼いただけた結果と、有難く思っています。

 

互いにけじめを持って行えば、特命のメリットは生かせます。

一番大きいのは、着工前に十分に建物の中身を練ることができること。

特に納まりについてよく話し合ってから請け負って貰えるので、工事はスムーズに行きやすいと考えています。

そうした意味で、今回の工務店さんはきちんとしたことをしてくださるところです。

特命でも相見積でも、事務所がする仕事は全く同じ。特命にもたれて図面を描かない、デティールを検討しない事務所…それが一番の問題と考えています。

 

実際、工務店さんには、数ヶ月にわたって度重なる減額変更に辛抱強くお付き合いいただき、(「…いつ、着工できるのでしょうか…」と一時は不安な一言も。)感謝します。そして、これからが本番、よろしくお願いします。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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