Sさんのお住まいリフォーム記録

NO.1

 

 私はこの度、久米さんに我が家をリホームして頂いた、S子と申します。

 陽の燦々と射す明るいキッチンで、木々の緑を眺めている私の傍らには、二匹の犬が寝そべっています。

 大げさなようですが、「もう何もいらない」とそんな気持ちにさせていただいています。

 過去の二度のリホームでは、得られなかったこの喜び

 「自然の移り変わりを楽しみ、愛犬と暮らす家」を手に入れました。 久米さんに心より感謝申し上げます。

 

1.リホームの動機 

 

 思えばここに至るまで、どれほどのまわり道をしたでしょうか。

 

 我が家は築17年の鉄筋で、160坪ほどの敷地にの字型に建つ、三階建ての家です。

 夫婦と子供三人、犬三匹には十分すぎる広さでしたが、その広さゆえの不便さ、生活しづらさに苦労していました。

 私ども夫婦はそれほど住まいにこだわりのあるほうではなく、この家も築浅の建物と緑の多い環境が気に入って、主人が即決して購入しました。

 私は三人目の出産間際だったこともあり、すべてを主人に任せていたのですが、初めてこの家を見たときは愕然としました。

 鉄筋にもかかわらず、まるで昔の日本家屋の間取りとでも言いましょうか。

 字の南側の部屋はすべて客間として使う設えになっていて、キッチンと水周りの生活スペースはすべて、小さな中庭をはさんだ北側に集中していたのです。 三階建ての我が家の壁にしきられて、昼なお暗いその場所で一日の大半を過ごすことになったのです。

 来客好きの主人は、この間取りをいたく気に入ったらしいのですが、後々、この暗くて寒い水周りとお風呂が、病気の悪化した本人をも苦しめることになるのですから、皮肉なものです。

 子供たちを土の上で育てたいと購入したにもかかわらず、1階はすべてガレージと倉庫で、2階と3階が住まいになっているため、庭は目が行き届かない場所のひとつになっただけでした。

 家事の効率も悪く、家の中で走り回り、産後あっという間に10キロ体重が落ちたぐらいです。疲労困ぱいし不機嫌な顔の私に、小さな娘たちは「もう前のマンションに帰ろう」と言い出す始末です。

 以前住んでいたマンションは、140㎡ほどの広さで、生駒山系から大阪の街がパノラマで、一望でき、中央にある明るく広いリビングは、子供たちの大好きな場所だったのです。

 この言葉にいたく傷ついた主人の発案で、北側の部分を以前のマンションのようにリホームしょうということになりました。 日当たりや眺めは変わらなくとも、和室や要らなかった収納をつぶし、床暖房の入った暖かなリビングが出来上がりました。サンタさんを信じている子供たちのために小さな暖炉を造り、キッチンは以前のマンションサイズにしと、前回のこのリホームは、今思えば子供たち中心に考えた、親馬鹿リホームだったように思います。

 実は、それ以前にも、入居前に一度、簡単なリホームをしていたのです。

 本来なら明るい南側に水周りをもってくれば良かったのでしょう。 しかし、前回一番手を入れた、南側の来客スペースを壊してしまう勇気は、そのとき、私たちにはありませんでした。

 以前よりは改善された家族スペースで、犬二匹が新たに加わり、当時はそれなりに暮らしていたように思います。

 

 そんな私たちが何故もう一度、そして今までで一番大掛かりなリホームをお願いしようかと考えたのには、我が家の大事件がありました。 長いこと患ってはいたものの、体調の良いときは普通の人以上に元気だった主人の体が急激に悪化したのです。そのため海外に渡航、手術となり、その後も含めると一年間、夫婦で我が家に帰れない生活になってしまいました。

 帰国してからは、健康の有難さと同時に、我が家で過ごせる喜びを感じるにつけ、家というスペースに、とても執着してしまったように思います。

 そして今度こそ、大小様々な我が家の問題をすべて解決し、過ごしやすくなった我が家で、新たに頂いた人生をやり直したいと考えたのです。

 

 さて、直すことには決まったものの、どなたにお願いしたらよいのか、建築事務所などとても敷居が高くて、リホームの相談など聞いてくださるのか、見当もつかない状態でした。主人の知り合の建築家の方に、以前自宅以外の仕事をお願いしたところ、知り合いゆえの遠慮や不便さを感じたので、今回は紹介や知人ではない方にお願いしょうと思いました。 

① 以前のように住宅メーカーではなく、建築家にお願いする。

② キッチン、水周りに細かい配慮ができるよう、女性がよい。

③ ペット(犬)を飼っているか、飼った経験がある。

④ コンクリート打ち放しの住宅が得意(以前から憧れだったのです)

 この四つに決まりました。

 そしてインターネットのホームページを見て、長女が久米さんを見つけてくれたのです。

 ここに至るまで数ヶ月を要したので、冗談ではなく本気でビフォーアフターに申し込もうかと思った矢先のことでした。

 

 

2.リホームの前に

 

 久米さんに快諾していただいて夢心地の私たちでしたが、このあとに家の構造チェック、構造計算書の作成など、私たち素人にはわかりにくい建物の状況を入念に調べていただく作業がありました。

 マンションなら色々な制約が想像できますが、戸建ての家なので、構造上の条件や、建築基準法などの法的条件で制約が生まれてしまうなど、あまり考えていませんでしたので驚きでした。 安易にもテレビのリホーム番組のように、柱を残してバンバン壊し、お好きなように~という感じを想像していたのです。

 もとより、久米さんはきちんとした性格の方なのでしょうが、阪神大震災を経験されてなおのことデザイン優先の無理は、一切いたしませんという感じがひしひしと伝わってきました。

 私や子供たちはテレビ番組に影響され、思い切ってやってくださいという気持ちでしたので拍子抜けしてしまいましたが、命からがら我が家に帰り着いた主人は、久米さんの見えないところにも手を抜かない仕事ぶりに、全幅の信頼をよせ、このリホームの成功を確信したそうです。

 久米さんと主人を見て、少し頭を冷やした私たちでした。

 

久米から一言…

 

コンクリートの壁や床を壊すことは基本的にしませんが、若干の雑壁(構造上主要な壁以外のもの)に手を入れざるを得ないこともあります。今回もそのような計画をしていましたし、また、以前のリフォームで既にコンクリートの壁が壊されていましたので、もう一度全体の構造の安全を確かめたいと思い、構造設計の担当者に検討して構造計算をやりなおしていただきました。(設計図書はあっても計算書が残っていなかったので、随分大変だったたと思います。)

そのほかに、建蔽率や容積率なども検討し、工事後も法規上問題がないようにすることが、リフォームの際は大切です。

 

床を抜くことは危険なので、はじめのご希望の吹き抜けは造れませんでしたが。 

さて、この後のご感想をお楽しみに・・・

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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