家造り記録 Hさん

第四回

 

 8月25日(土)に地鎮祭を行いました。当日は、残暑厳しい暑い日となりましたが、晴れ渡った空を見て、まだまだスタートラインですが、ようやくこの日を迎えられたことに身が引き締まる思いでした。

 安堵の気持と、定期的に行って来た久米さんの事務所での打ち合わせも終わってしまったとの寂しい気持ちが交錯しましたが、S工務店が暑さ除けのテントを張って下さったおかげで暑さを凌げ、厳かな地鎮祭を行うことが出来ました。

 

 当日、現場に到着すると、S工務店により地鎮祭の準備がすでに万端整っていました。雑草に覆われていた敷地もS工務店によってきれいに整地されていました。

 又、式当日は、先にも触れましたが、暑さ除けのテントと、紅白の垂れ幕及び、地鎮祭に必要な諸品のご準備を残暑厳しい中、又、朝早くからご足労頂き、S工務店には感謝の一言です。どうも有難うございました。又、これからも末永く宜しくお願い致します。

 

 地鎮祭はもちろん私達家族には初めての経験で、事前に施主が登場する場面に関しては、神主さんのご指導を仰ぎながら、私達は何の基礎知識もなく進行していきました。

 神主さんは地鎮祭を行う意味につき、子供達にも分かりやすく説明してくださいました。又、式の途中で参列者全員がお神酒を頂いたのですが、お神酒を飲むことが出来ない下の娘は、困り顔で鼻の頭に大粒の汗をかきその場に立ちつくしていました。これもいい思い出になると思います。ちなみに上の娘は、一気に飲みほしていました。

 久米さんの鍬入れの時の「エイ」との掛け声も心強く感じました。S工務店には、参加者全員分のタオルをご準備頂く等、何から何までお世話になりました。余談ですがこのタオルがとても手触りがよく、我が家では人気のタオルとして今でも大事に使わせていただいております。

 

 地鎮祭も皆様のお力添えにより滞りなく終了し、当日の午後はキッチンでお世話になるC社に出向き無事契約を結ぶことが出来ました。C社の皆様にも感謝です。

 

 翌日はS工務店から、同社の本社にて近所の子供達を集め木工教室を開催するとのことで私達家族もお招きに預かり、親戚の子供もつれて参加させて戴きました。当日は夏休み最後の日曜日で、会場は子供達で大盛況でした。地鎮祭の時に見覚えのある大工さんに手伝ってもらいながら、子供達は楽しそうに作品を作っていました。S工務店のアットホームな社風が伺え、一緒に参加した親戚からはいい工務店でよかったねと羨ましがられました。

 

 そうして、いよいよ地盤改良工事が9月3日から始まることとなりました。

  更地だった土地についに重機が入り工事が始まります。工事が始まる前日に現場を見に行ったところ敷地は柵に覆われ、頼もしい重機が鎮座していました。

 重機に「頼んだぞ、良い仕事してくれよ」と密かにお願いしました。工事に関する立て看板に自分の名前が記されているのもこれが最初で最後だろうと、天気のいい日に写真に収めておこうと思いました。

 

 地盤改良は阪神淡路大震災を経験している久米さんとしては必然的に慎重になる事項で、係る出費は正直痛いのですが、施工図を拝見させていただき、その杭の長さと本数の多さに圧倒され、これに勝る安全策はないと感じました。

 久米さんから「ご近所さんはマンションでも建つのかもと思われますよ」とおっしゃって下さり何とも心強いかぎりです。但し、「地中障害が無ければいいのですが」とのことで、私達も地中に障害物がありませんようにと祈る思いでした。実は現場付近は大きな岩がごろごろしているところで、ひょっとしたら地中に埋まっているのではと、心配事は頭から離れませんでした。

 

 工事開始の9月3日、私もその日は仕事をしながら無事地盤改良工事が完了することを祈っていました。地盤改良工事は3日間で完了する予定となっていました。当日は久米さんが工事に立ち会い、お昼頃、市役所に提出する書類の押印のために、我が家に来て頂き、妻に途中経過を報告頂きました。

 久米さんは妻に「地中に何か障害物が見つかりましたが、心配はいりません」との説明で、市役所に寄って又、現場に戻りますとのこと。心配性の妻に真実を伝えるとダメージが大きいと判断され、私に久米さんから直接状況の説明がありました。

 久米さんによると、「何か固いものが地中に埋まっていて施工図通りの工事が出来ない状況となっている。どうやら固いものはコンクリート片みたいで、コンクリート片が地中の固い地層まで達していれば問題ないのだが、今の状況では判断が付かない。このままでは工事が進められない」との深刻な内容でした。

 久米さんはいずれにしても工事は一時ストップし、善後策につき地盤改良工事をお願いしているH社と協議するとのことでした。

 

 正直、頭が真っ白になり、建屋を建てる前にこんなに苦労しなければならないのかとやるせない気持ちになり、久米さんからの連絡を待ちました。気になるのはやはり費用のことです。これ以上の費用追加は正直しんどいのが本音でした。

 

 久米さんは、H社に再度今の状況での施工手段につき改善策を報告するよう依頼をし、H社からの回答は「おそらくコンクリート片は固い地盤まで達しているだろうと思われるので、コンクリート片まで抗を打ち込めば問題ないであろう」とのことでしたが、慎重な久米さんは、H社の意見に納得されていませんでした。もしも、コンクリート片が固い地盤まで達していなかった時の私達に起こる惨劇を考え、私たちに次の提案をして頂きました。

 それは、コンクリート片が実際どれぐらいあり、どこまで達しているのかを改めて再度、ボーリング調査とラムサウンディング調査を行い、その結果に基づき施工手段を見直すとのことでした。この調査にもちろん費用が掛かりますが、これをやらないと前に進めないことは明らかでしたので、進めてくださるようお願いしました。こうして一時ストップしていた工事が又、動き出しました。

 

 コンクリート片がどれぐらいあるのか、どこまで達しているのか、又、撤去に幾らの費用が掛かるのか等、心配事は尽きないのですが前進するしかありません。調査結果につき固唾を飲んで、又、神にすがる気持ちで待っていました。

 後日、久米さんから調査結果の連絡が入りました。調査の結果は私達には意外にも予期せぬもので、コンクリート片は大きな塊で、固い地盤迄達しており、コンクリート片を撤去することなくその上に、当初の計画の抗より短く施工しても問題ないとの嬉しい報告でした。

 安堵で胸をなでおろし、地盤改良も当初の予算内で施工できる運びとなりました。こうして9月26日工事が再開されました。

 

 工事が再開され、楽しみに現場を見に行きました、土地が掘られ、丸いコンクリート抗が敷地にしっかりと打ち込まれている状況が確認出来ました。

 この1ヶ月は工事着工のわくわく感と、地盤改良工事の中断等、喜怒哀楽が激しくしんどい日々でしたが、ようやく工事も開始され、杭の上に無数の鉄筋が組まれている様をみると、この頑丈に改良された地盤の上で末永く安心して住まえることへの喜びが、ふつふつと沸いてきました。

 

 10月13日に現場を見に行ったところ、ちょうど久米さんと構造計算ご担当のTさん、そしてS工務店現場責任者のTさんが、ヘルメットをかぶり工事の確認をされていました。

 久米さんは、「今工事状況を検査しているところです。」とのことで、もしも工務店任せであれば、工事の良し悪しの判断は施主である私が行わなければならず、それは不可能であることは言うまでありません。

 これまで、いろんな局面で久米さんに助けてもらい、何とかここまで導いて頂いております。これからも竣工まで、いろいろなドラマが待ち受けていると思います。

 

今回の地盤改良の件で、我が家にいい風が吹いてきたと思っています。

これからも、安全無事に工事が進行することをお祈りいたしております。

 

次回は、上棟式の状況からご報告したいと思います。

 

 

久米から一言…

 

コンクリート片の件は、予想外でしたが、幸い、

上手く安心に納めることができて私も安堵しています。

設計の前に、地盤調査は勿論行っているのですが、

今回は造成地で盛土部分も多かったため、

良質な土質と予測していたので、費用を抑えるためにサウンディング調査のみ、

としていたのでした。


その最初のサウンディングで硬いものにあたったデータもありましたが、

周辺はもともと、岩の多い地域なので、その土で埋土(盛土)しているとなれば、

何箇所かは小さな岩にはあたるだろうと考えてはいました。

が、実際には岩ではなかったと言うことです。

コンクリート片といってもかなり広い範囲で

何故このような状態なのか、いまだ分からない部分もあるのですが、

ボーリング調査やラムサウンディング調査(両方やりました)

による地質サンプルから地盤改良後の反応もでていて、

また、

その下の部分も相当にしっかりした地質が連続していることが確認されたので、

安心してコンクリート片までの深さを

今回の改良工事とすることができました。

 

地盤だけは、予測で設計しては怖いと思います。

いくら、保証や補償がついていても、

精神的なものも含め、受けた被害を全て元とおりにはできないでしょう。

 


 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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