家造り記録 Hさん

第五回

 

 いろいろあった地盤改良工事も無事完了し、頑丈な基礎工事も予定通り行われ、11月10日(土)に上棟式を行うこととなりました。

 実は、家づくりを始めた当初は、上棟式を実施するかどうか迷っていました。家を建てた親戚・友人に上棟式のことを聞くと「やっていない、又は形だけ」との回答が多く、又、インターネットや雑誌で調べると、様々な意見があり正直悩みました。 予算ギリギリでことを進めており、出来たら省略したいなという気持ちが本音の部分でした。

 

  しかしながら、先にも書きました通り、ここまで無事たどりつけたのも、家つくりを通じて私達が出会った人々のお力添えがあったからで、ささやかながら、私達に出来る範囲で上棟式を行うべきではないかとの気持ちが高まりました。特に、S工務店の皆様には工事費用の減額でご苦労をかけたこと、及び、これからも気持ちよく仕事を行って頂きたいとの強い思いがありました。

 上棟式も一生の内、これが最初で最後だろうとの気持ちと、子供達を参加させ、大人たちと一緒に、まだ柱が立っただけの家で、わいわい食事をすることは、きっと記憶に強く残るだろうとの思いもありました。両親も遠路はるばる九州から参加することとなり、総勢16名(私達家族が6名)で執り行うこととなりました。尚、ご出席頂ける人数は、事前に久米さんから連絡を頂いていました。

 

 さて、ここからが問題です、式自体何をどうすればいいか、車での移動を考えると、お酒を振る舞っても大丈夫か、お祝いの品は何がいいか、ご祝儀はどうするか等、考え出したら頭が痛くなります。

 先ず、食事をどうするか迷いましたが、見栄えと、好き嫌い等も考慮し、月並みですが、お寿司を桶で人数分+αを準備し、温かいお吸い物を人数分用意することにしました。又、お酒はお祝いの席なので準備することにし、飲めない方のためにノンアルコールビールと、ペットボトルのお茶を用意することにしました。

 手土産には、昆布と地元のお酒(小さい瓶)とさせていただき、ほんとに恥ずかしい金額のご祝儀(小学生のお小遣いレベルです)をご準備させて戴くこととしました。

 

 そしていよいよ、11月10日を迎えました。開始時間は事前に久米さんと、S工務店の打ち合わせにより16:00からとなっていました。季節柄、寒さと雨を心配しましたが、運よく当日は極端な冷え込みは無く、天候にも恵まれました。

 

 建築現場に到着したところ、初めて見る建物(我が家)がシートに覆われて敷地に建っていました。いつも、分厚い設計図を眺めていて、こんな外観になるのだと心わくわく想像しておりましたが、ついに、見慣れていた平面だった建物が、立体となって眼の前に存在しています。当たり前ですが、設計図通りに出来ていると感心しました。

 

 最初の感想は思ったより大きいなということです。久米さんからは、「平面(基礎だけの時)では小さいと感じるかもしれませんが、実際建物が建つと大きく感じますよ」と、以前言われていたことが実感できました。実際は小さな家ですが、大きく見えるのは不思議です。

 未だ、柱が立っているだけですが、形となって目に見えてきたことで、妻も今まで以上に興味を持って、「ここがキッチン、あそこが・・・」と目を生き生きさせています。

 私の両親も、頑丈な基礎と、家を支える無数の柱を見て感心しきりでした。

 

 S工務店会長から、2階に上がってみますかとお声をかけて戴き、足場に用意された階段を上り、2階を案内して頂きました。そこからは思った通りの景色が開けていました。 この景色を大事にしたいために、某ハウスメーカーとの家づくりを白紙にしたことは、先に書いた通りです。思い通りの家の形になっていることに喜びを感じた瞬間でした。

 

 S工務店会長の「仕事やめ」との大きな掛け声で、この日の大工さんの仕事は終了しました。

 そして、いよいよ上棟式の始まりです。想像していた通り、席は建築資材を利用し大工さんの手で準備されていました。

 最初に棟梁の案内で、私と妻が、建物の四隅に御酒・米・塩をお供えしました。

式はS工務店現場責任者のTさんの挨拶で始まり、その後、参加者全員、用意した紙コップにお酒を入れて乾杯となりました。 施主の挨拶では、大工さんに私達家族の顔を覚えて戴きたくて、家族の紹介をさせてもらいました。

 S工務店会長による「上棟祝い歌」は、ご本人はちょっと喉の調子が悪いと謙遜されていましたが、心のこもった歌声に、感謝の気持ちで一杯になりました。又、参加者全員で掛け声を合わせるシーンでは、子供たちも一緒になって声を出し、参加者が一つになった素敵なひと時でした。

 

 あっという間に時間は過ぎて、S工務店社長の挨拶と三本締めで上棟式は終了。

久米さんとS工務店の皆様のお力添えにより無事、上棟式を行うことが出来、改めて御礼申し上げます。又、本来に比べ質素になってしまったことを、お詫び致します。

 

 

 上棟式は、私達家族にとって、とても思い出深いものとなりました。きっと、家が完成して月日が流れても、この日のことは家族全員忘れないと思います。本当にやってよかった!!と実感しております。

 又、九州から参加した両親も式では緊張気味でしたが、楽しんでくれたことと思います。「いい人達に家を建てて戴いて本当によかった。いい上棟式だった。」と喜んでいました。

  

 ようやく、家の形が見えてきました。今まで色々ありましたが、どうにかここまでたどり着くことが出来、これまで家づくりに携わっていただいた皆様に感謝の気持ちで一杯です。

 正直、地盤改良工事がストップした時は、本当に家が建つのか不安に駆られましたが、久米さんの取り計らいにより、無事乗り越えられ、この日を迎えることが出来ました。

 

 

 これからは、大工さんの仕事が主体となり、徐々に家らしくなってくると思います。妻は今からキッチンがいつ備え付けられるのか気になる様です。おそらく、早く実物を見たいのでしょう。今まで以上に、我が家で恒例となっている週末の現場見学が楽しくなってきました。

 これからは、内装・外装・什器等で迷いながらも、決断を迫られる事態が待ち受けていることと思います。久米さんのご意見を伺いながら、楽しみながら事を進めていきたいと考えています。

 

 又、S工務店の大工さんを始め、各種工事でお世話になる皆様方には、これから寒さが一段と厳しくなる季節を迎えます。

 どうか体調を崩されることなく、怪我も無く、安全第一で工事が進むことをお祈りいたしております。

 

 

 次回は、建屋がどのように出来上がっていくか、大工さんの仕事ぶりを含めご報告させていただきます。 

 

 

久米から一言…

 

Hさんはご謙遜ですが、とても立派な上棟式でした。質素なんてとんでもありません。

お土産も美味しいものを揃えていただき、お酒までつけていただき、

そのうえ、ご祝儀まで頂戴して、私は勿論、皆、

どんなに嬉しく華々しい気持ちで、感謝申し上げたことか。

心より、御礼申し上げます。

また、ご両親さまにも喜んでいただけて、本当に良かったですね。

ご同席のお嬢様方も、しゃんとされていて、なんだか大人びて見えた一日でした。

 

工事は後半にさしかかっています。

竣工が楽しみです!


 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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